地方空港の国内線の現状

LCC(格安航空会社)の撤退

2018年06月12日 11時14分


LCC(格安航空会社)の撤退によって存続が危なくなっている地方空港の現状 


訪日外国人客数は増加傾向にあります。
日本政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年(平成32年)には訪日外国人数を2000万人に増やす計画を立てています。
インバウンドのお客さまが増えている風潮もあります。
特に観光客が増える新千歳空港や関西国際空港や中部国際空港などの拠点空港はLCC(格安航空会社)をターゲットにした
新しいターミナルビルを建設する動きもあります。
 
すでにLCC(格安航空会社)を専用にしたターミナルを持っている空港もあります。
まずは「那覇空港」です。2012年(平成24年)10月18日に日本で初めてのLCC専用ターミナルをオープンさせました。
2番目は、関西国際空港のLCC専用ターミナルです。これは2012年(平成24年)10月28日でした。
そして、この第2ターミナルはLCC専用の国内線専用にして、第3ターミナルをLCC国際線専用にしました。
3番目は、2015年(平成27年)4月15日に開業した成田空港の第3ターミナルです。
 
こういった順調な動きだけではありません。
中部国際空港はエアアジアとANAホールディングスが提携したエアアジア・ジャパンの拠点空港になっていました。
2012年(平成24年)のことです。2014年(平成26年)の夏にはLCC専用のターミナルの建設を予定していたのです。
 
けれども2013年(平成25年)6月には提携が解消されて白紙になります。10月にはついに運行終了になりました。
そして、専用ターミナルの建設は凍結されます。
その後、エアアジアは2014年(平成26年)7月にインターネット通販で好調な楽天などから出資を受けます。
 
新生エアアジア・ジャパンとして日本への再参入を決定しました。
2016年(平成28年)には再度、中部国際空港に国内線と国際線を同時に就航させる計画が決定しました。
そこで、LCC専用のターミナル建設が再度検討されているところです。
 
新千歳空港は、空港の受入の能力が限界に達しています。
外国人観光客の急増と航空機の離着陸回数が増えたからです。
国土交通省は再整備のひとつとして、LCC専用ターミナルを新設するか、ターミナルビルの拡張を検討しています。
東京オリンピック・パラリンピック2020をキッカケにして、国内の各空港にLCCを誘致しようとしています。
発着便を増やして空港を活性化させるのが狙いです。
 
けれども、すべての空港が積極的ではありません。
例えば、スカイマークの例があります。
2013年(平成25年)12月。米子から成田への路線など3路線10便を就航させたのが鳥取県の米子空港です。
翌年2014年(平成26年)4月には米子から羽田の路線など3路線が就航しました。
 
その同じ年の10月には、米子から成田への路線は撤退します。
そして2015年(平成27年)8月には搭乗率に伸び悩んだ米子空港から全路線撤退しました。
2013年の米子空港乗り入れから、わずか1年8か月しか経っていないのにです。
 
スカイマークの苦悩はまだまだ続きました。LCCの価格競争が激化しました。
そして、円安マーケットの進行によって燃料費が高騰しました。
さらにはエアバスA380の発注をキャンセルしたことで違約金問題が引き金になり、経営破綻してしまいます。
 
スカイマークは民事再生手続きをすることになります。
手を上げたのがANAホールディングスと米国デルタ航空です。
2015年8月には東京地方裁判所で行われた債権者集会でANAホールディングスの支援が決まりました。
5年以内に再度、上場することを目標にして新しい経営体制を発足させました。
 
地方空港の活性化を目的にLCCを誘致しても、撤退になってしまうのは、名前ばかりの規制緩和が原因になっているかもしれません。
新規航空会社の参入規制の緩和がスタートしたのは、1986年(昭和61年)のことでした。
 
同一の路線において複数の航空会社が運航する基準が大きく緩和されたのです。
実際に1998年(平成10年)には、スカイマークやエアドゥが参入しました。
続いて2002年(平成14年)にはスカイネットアジア航空が参入してきます。
 
これまで幹線の権限を持っていたのがJALやANAでした。
そういった状況の中で申請すれば新規航空会社が参入してもいいというスタイルで、自由競争のようにしたのです。
規制緩和を決めた最初のときは、サービスの多様性や運賃の値下げによって多様化が期待されていました。
 
その結果、航空業界を活性化させるという日本政府の狙いがあったのです。
ですが規模の大きさの違いは歴然としていました。自由競争と言っても力があるほうが有利になっている図式は変わりません。
地方空港が折角利便性を求めてLCCを誘致しても不採算路線になれば撤退してしまいます。
こういった問題を地方空港は抱えているのです。